企業は人、なのか?

企業は人、なのか?
Photo by Priscilla Du Preez 🇨🇦 / Unsplash

「企業は人なり」

これはドラッカーや松下幸之助の発言とされるが、実に的を射た言葉だ。

同じことをしているはずなのに、成果が出る組織と出ない組織がある。もちろんオペレーションの差はあると思うが、違いを生み出す一つの要素が「人」だ。

ここではメンバーのスキルや人事制度の話をしているのではない。極端にいえば、同じチームであっても、個々の役割を変えたり座席の配置を変えたりといった小さな違いが結果の差につながることもあるのではないだろうか。

例えばテレアポをしてリードを営業マンに渡すインサイドセールスチームを考えよう。あるインサイドセールスAさんはその日すでに107件のコールをこなし、時刻は16時55分だ。定時は17時だが、フレックスタイム制なので16時をすぎていれば退勤しても構わない。そんな時に、あと1コール架電できる組織と、そうでない組織がある。それはAさん自身のスキルやマインドセットに原因があるかもしれないし、チームの人間関係に原因があるかもしれない。あるいは自分の席は上司から見えにくいから今のうちに帰ってしまおう、という動機が働くかもしれない。

このような小さな差が積もりに積もって目標達成度合いの差になることもある。そうして、達成できたチームでは「もっと頑張ろう」と意欲が上がり、また成果を出せる。わずかに届かなかったチームでは「惜しかったね」と自らを省みることもなく、また「惜しくも未達」を続ける。まさに、「企業は人なり」だ。

一方で、「人の違いは全く差を生まず、正しいタイミングで正しい場所にいること」が決定的な違いを生むこともある。

例えば2021年までのスタートアップバブルがまさにそうだ。もちろん最低限求められる人材の質はあるだろうが、何よりも「その時点でエクイティファイナンスを実行できる組織である」という一点が多額の資金へのアクセスを可能にし、発行体に大きな飛躍の可能性をもたらした。バブルが弾けたいま、苦しむ企業も少なくないが、当時売り抜けた起業家が富を手にした最大の要因は、「その時、その場にいたから」ではないだろうか。

ビジネスにおいては人が決定的に重要な場面と、「正しいタイミングで正しい場所にいること」が決定的に重要な場面がある。その両者を上手に使い分けて、自分や組織の成長・成功につなげていきたい。