ミクロの会計士、マクロのバンカー

ミクロの会計士、マクロのバンカー
Photo by Markus Winkler / Unsplash

日本のスタートアップシーンにおいて、管理部門を統括するCFO/CAOの代表的なキャリアは投資銀行出身者と公認会計士だろう。近年ではより大規模な資金調達が目立つことから、CFOは投資銀行あるいはPEファンド出身者が務め、管理部門長を会計士が務めるケースも少なくない。かくいう自分も、投資銀行出身のCFOと会計士の管理部門長のそれぞれの下で働いた経験がある。

当たり前の話だが、出自が違えば得意な領域は異なる。それぞれに仕えて自分が強く感じたのは、会計士はより細かい、取引単位での判断に強みを発揮する一方で、バンカーはステークホルダー全体の関係図を描きながらマクロな方向性を決める場面で違いを生み出すということだ。

もはや定説となりつつあるが、大規模な資金調達を行なって一気に事業を拡大していくことが求められる場面ではバンカーが強みを発揮するだろうし、逆にボトムアップで地盤を固めていくなら会計士の方が良い。2名を採用できる余裕があるのであればそうすべきだが、どちらか1名を選ぶのであれば、ポジショントークもあるが会計士を選ぶべきだ。

スタートアップは想像以上に脆い組織だ。上場が近いスタートアップでも、キーマンが2、3人退職したり、大型案件を1件失注しただけで大きく戦況が変わる。上場までは守りを優先すべきだし、そもそも日本のグロース市場ではバンカーが活躍するような大型案件も限られている。以前ほど会計士CFOの存在感はなくなっているが、スモールIPOを指向するなら会計士で十分だろう。

一方で、グローバルに出ていくならバンカーが優勢だ。当然ファイナンスの知見には大きな開きがあるし、会計士として業界に詳しいからこそ言えるが、英語が得意な会計士は多くない。CFOが英語を話せないなんてことは許されないだろう。