ピーター・ティールとY combinator

ピーター・ティールとY combinator
Photo by Alice Yamamura / Unsplash

前回に続いて、ピーター・ティールの話。

ティールのスタートアップ論で最も特徴的なのは、独占(monopoly)を獲得することへの執着と言える。ドットコム・バブル崩壊後にスタートアップシーンを席巻した(そして今も主流である)リーン・スタートアップに対しても否定的な見方をしている。

競争は負け犬のものだ。これがティールの主張だ。特定の市場を独占することでキャッシュ・フローを最大化し、企業価値を向上させるべきだと彼は説く。

そんな彼が、一時期シリコンバレーの著名なアクセラレータープログラムであるY combinatorのパートタイムパートナーに就任した。Y combinatorからはAirbnbやDropbox、Stripeといった名だたるスタートアップが生まれたこともあり、その選考の通過率は1.5~2%ほどだという。

Y combinatorに採択されるために、スタートアップの創業者は熾烈な競争に勝ち抜かなければならない。個々のスタートアップのアイデア同士が競争にさらされているとは限らないが、少なくとも、Y combinatorに応募する起業家のメンタリティは、ティールのそれとは相反するように思える。

今となってはティールとY combinatorの関係は終了しており、当時何があったかについて正確な事実を知る由もない。それでも、根本的な価値観における相違があったのではないか、と想像することがある。